産婆の講演会で感動の涙
公開日: : 日々のこと
私は82歳産婆(開業助産師)です。
二回目の脳卒中を発症して、5年になります。私は発症して初めて市立図書館で終活と言える講演会を開きました。思い立ったら吉日です。定員30名がいらっしゃいました。ありがたいです。高齢の方は70代の方、若い方はあんまり見当たりません。また私の助産院でお産した方が10名くらい。お子さんと一緒に参加してくださいました。
私のお産のお話と、それぞれお産を体験した方の体験談また最後には私のところで自然なお産をした方の映像がありました。それも私にとって初めて観る映像でしたが、大変良かったです。
そうして、お話会が終わり、私はほっと一息ついているところに二十歳位の娘さんと一緒に、私の車椅子の前に現れた40歳代の女性がおります。「私はすみません。どちら様でしたか?」とたずねました。彼女は「自分はこの娘を産む時に逆子だったので、大阪のベテラン産婆さんのところに連れて行ってもらい、そこでこの娘を産んだものです」とはっきり言いました。
私は「すぐにわかりました。あーあの時の方ですね。よく覚えていますよ」と言いました。
そうして、「今までどうしていましたか?私はあなたのことは忘れたことはありません。あれからもう19年ですね。あなたのご実家の前を通る時、今頃どうしているかしら?と気になっておりました。」そう。今娘さんは大学生、本当にお会いできてよかったです。
「どうして私がここにいることが分かりましたか?」と伺いました。すると彼女は、私のことが気になり何かスマホで調べたら、今日は市立図書館で講演会があることがわかり、家から2時間くらいかかったが、最後の時間に間に合うように頑張ってやってきたとのことです。私は彼女の肩を持って感極まって声をだして、泣いてしまいました。
どんなにか嬉しかったかしら?あらーあのときの赤ちゃんがこんなに大きくなり、素晴らしい。今日はここに来て頂きありがとう。
当時のことをふりかえってみました。
この方が私のところにいらしゃったのは赤ちゃんが逆子であることがわかったのです。逆子は、助産師がお産はできません。産科医は逆子のお産をあまりしたことがありません。ですから、最近の産科医はほとんど逆子は帝王切開にすることが多いです。この妊婦さんは、自分も逆子で自宅で産婆がお産をしてくれたので、自分も出来れば自宅で逆子で産みたいと願っていたのですが、私は残念ながら自宅での私の逆子のお産は不可能だとはっきり言いました。
そうして彼女は近くの病院に入院しました。そこの医師はレントゲンを取りやっぱり頭が大きいから、下からのお産は無理だと一生懸命お母さんを説得していました。
私は産科医にトライアルで逆子の経膣でのお産のチャレンジはできないのか?と相談しましたが、それは無理だとその時医師ははっきり言いました。すると彼女は病院を後にして帰宅しました。
私は彼女が経膣で逆子を産みたいと一生懸命願っている姿に、私が何か協力できないか考えました。そうして、ベテラン産婆が何人も逆子のお産をしていた方がいると聞いたので、その産婆を探し妊婦さんを連れて大阪まで診察に出かけました。その後、彼女の陣痛が来てその産婆のところで一晩様子見てもらい赤ちゃんは大変安産にぽろりと生まれました。これぞ「案ずるより産むが易し」のお産でした。
その後彼女から何のお便りもなく、19年間が経過したのです。そうして今回母子共にお会いできて、感動したのです。
私が講演会を開いた最高の報酬のようです。感謝感謝です。
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