第10話 呼ばれた名前

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その老人は、二人の高齢の女性が麓にいると、電話連絡をしていたようです。
すると、下のほうから、二人の高齢の女性が老人車を引きながら、上がって来ました。

そのうちの一人の女性が、
「スンジャヤー」
と言いながら上がってきたのには、本当に驚きました。

半世紀前のことを、覚えていたのでしょうか。
私の韓国名は「スンジャ」です。

やっと、父の里に来ることができました。
半世紀前に、母と一緒に訪れた場所です。
私の脳の中には、その当時の光景が、またフラッシュバックしました。

私は、あのチエシル(祭室)の場所はどこかと、その老人に尋ねました。
チエシルとは、羅家で冠婚葬祭があった時に、その場でいろいろ行う場所です。
半世紀前、私は女の従姉妹と、その場所で遊んだことを思い出しました。

その場所は、今では雑木に覆われ、小高い山のようになっていました。

しかし、私は、ここに来ることができたのです。
あの時の記憶が、またタイムスリップするように蘇ってきました。
本当に、奇跡としか言えません。

私は、二人の高齢の女性(96歳、85歳)の方々と、涙を流しながら手を握り、別れを惜しみながら、涙を流して別れました。

「ここに来れて良かった」

遠い親戚に、会うことができたのです。

85歳の女性が、韓国語で、
「こんなふうに別れるなんて、本当は私の家で一晩泊まって帰らなければいけないのに」
と呟いていました。

私は、その言葉に心から感動しました。
この言葉は、親戚だからこそ、自然に出てくる言葉なのだと思いました。

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